
大学の研究成果が社会で使われる入口のひとつが特許です。文部科学省の調査によると、令和6年度に国内の大学が出願した特許は10,445件(国内6,616件、外国3,829件)で、前年度の10,050件から増えました。一方、特許などの知的財産から得た収入は大学全体で71.65億円で、前年度の81.18億円から減っています。
出願の多い大学と、知的財産で収入を得ている大学は、必ずしも同じではありません。この記事では、特許出願件数と知的財産権等収入の2つの順位を並べて紹介します。
ランキングの評価方法

本ランキングは、文部科学省「令和6年度 大学等における産学連携等実施状況について」の機関別データ(令和6年度実績)をもとに作成しています。
- 特許出願件数:特許権の出願件数(国内+外国)。主表の順位はこの値で決めています
- 知的財産権等収入:特許権の実施許諾や譲渡による収入に、ノウハウ、著作権、成果有体物などの収入を加えた合計
- 対象:同調査に回答した大学987校。短期大学、高等専門学校、大学共同利用機関は含めていません
- 共同出願の割合:出願件数のうち、企業など大学以外との共有によるものの割合
東京科学大学は、旧東京工業大学と旧東京医科歯科大学の実績を合算しています。知的財産権等収入は、一時的な収入(マイルストーン収入や株式の取得など)を含むため、年による変動が大きい点にご注意ください。
特許出願件数ランキング TOP10
| 順位 | 大学 | 設置 | 出願件数 | 国内 | 外国 | 前年度差 | 共同出願の割合 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 東京大学 | 国立 | 917件 | 510件 | 407件 | +48件 | 74.0% |
| 2 | 大阪大学 | 国立 | 771件 | 401件 | 370件 | +80件 | 68.1% |
| 3 | 京都大学 | 国立 | 698件 | 306件 | 392件 | +88件 | 75.8% |
| 4 | 東北大学 | 国立 | 645件 | 381件 | 264件 | +32件 | 58.6% |
| 5 | 東京科学大学 | 国立 | 505件 | 281件 | 224件 | +56件 | 77.2% |
| 6 | 名古屋大学 | 国立 | 411件 | 264件 | 147件 | +34件 | 60.8% |
| 7 | 慶應義塾大学 | 私立 | 331件 | 126件 | 205件 | +117件 | 59.5% |
| 8 | 九州大学 | 国立 | 320件 | 175件 | 145件 | +36件 | 77.5% |
| 9 | 北海道大学 | 国立 | 281件 | 178件 | 103件 | -6件 | 67.6% |
| 10 | 大阪公立大学 | 公立 | 178件 | 68件 | 110件 | -20件 | 70.8% |
上位10校の出願件数は合計5,057件で、大学全体の48.4%を占めます。出願のあった大学は239校でした。
各大学の解説
第1位 東京大学(917件)

東京大学の特許出願は917件で、全国で最も多い件数でした。内訳は国内510件、外国407件です。前年度の869件から48件増えました。
保有する特許権は5,038件、特許権の実施許諾等の件数は4,800件で、いずれも全国最多です。知的財産権等収入は9.44億円で全国2位です。出願件数では1位ですが、収入では京都大学に次ぐ順位でした。
第2位 大阪大学(771件)

大阪大学は771件で、前年度から80件増えました。国内401件に対して外国が370件あり、外国出願の割合は48%です。
知的財産による収入は7.21億円(全国3位)でした。このうち特許権の実施等による収入は4.37億円で、残りの2.84億円は特許権以外の知的財産による収入でした。発明届出は470件で、東京大学に次ぐ件数です。
第3位 京都大学(698件)

京都大学は698件でした。外国出願が392件と、国内の306件を上回っています。前年度からの増加は88件で、上位10校では慶應義塾大学に次ぐ伸びです。
収入面では、知的財産権等収入が15.15億円で全国1位です。出願件数は3位ですが、収入では他大学を大きく引き離しており、ランニングロイヤリティ(継続的な実施料)が9.89億円を占めます。
第4位 東北大学(645件)

東北大学は645件で、国内出願の381件は東京大学、大阪大学に次ぐ件数です。前年度からは32件の増加でした。
企業などとの共同出願の割合は58.6%で、上位10校の中で最も低く、大学単独の出願が相対的に多いことが分かります。保有する特許権は4,017件です。知財収入の順位は全国5位(3.00億円)です。
第5位 東京科学大学(505件)

東京科学大学は505件でした。2024年10月に統合した旧東京工業大学と旧東京医科歯科大学の令和6年度実績を合算した数値です。国内281件、外国224件で、前年度の合算値から56件増えています。
共同出願の割合は77.2%と高く、出願の4分の3以上が企業などとの共同によるものです。知的財産による収入は1.91億円(全国8位)でした。
第6位 名古屋大学(411件)

名古屋大学は411件で、前年度から34件増えました。国内264件、外国147件です。
発明届出は296件、保有する特許権は1,793件でした。収入面では、知的財産権等収入が1.23億円で全国11位です。
第7位 慶應義塾大学(331件)

慶應義塾大学は331件で、私立大学では最上位です。前年度の214件から117件増え、上位10校で最も大きな伸びでした。
外国出願が205件と、国内の126件を大きく上回っています。知財収入の順位は全国9位(1.83億円)です。
第8位 九州大学(320件)

九州大学は320件で、国内175件、外国145件でした。前年度から36件増えています。
共同出願の割合は77.5%で、上位10校で最も高い値です。知的財産による収入は1.45億円(全国10位)でした。
第9位 北海道大学(281件)

北海道大学は281件で、前年度から6件減りました。国内178件、外国103件です。
一方、知的財産権等収入は4.11億円で全国4位です。前年度の2.23億円から84.6%増えており、出願件数の順位(9位)より収入の順位が高い大学です。
第10位 大阪公立大学(178件)

大阪公立大学は178件で、公立大学では最上位です。外国出願が110件と、国内の68件を上回りました。前年度からは20件の減少です。
保有する特許権は1,007件です。第11位の東京理科大学(177件)との差は1件でした。
知的財産権等収入ランキング TOP10
特許などの知的財産から得た収入で並べると、順位は次のとおりです。
| 順位 | 大学 | 設置 | 知的財産権等収入 | うち特許権の実施等 | 実施等件数 | 前年度比 | 出願件数の順位 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 京都大学 | 国立 | 15.15億円 | 13.81億円 | 2,389件 | -14.8% | 3位 |
| 2 | 東京大学 | 国立 | 9.44億円 | 7.56億円 | 4,800件 | -33.2% | 1位 |
| 3 | 大阪大学 | 国立 | 7.21億円 | 4.37億円 | 1,200件 | -11.1% | 2位 |
| 4 | 北海道大学 | 国立 | 4.11億円 | 3.43億円 | 733件 | +84.6% | 9位 |
| 5 | 東北大学 | 国立 | 3.00億円 | 1.05億円 | 917件 | -27.6% | 4位 |
| 6 | 順天堂大学 | 私立 | 2.77億円 | 0.03億円 | 6件 | -42.8% | 24位 |
| 7 | 札幌医科大学 | 公立 | 2.06億円 | 1.58億円 | 239件 | +178.0% | 119位 |
| 8 | 東京科学大学 | 国立 | 1.91億円 | 1.28億円 | 1,038件 | +9.1% | 5位 |
| 9 | 慶應義塾大学 | 私立 | 1.83億円 | 1.66億円 | 591件 | +18.3% | 7位 |
| 10 | 九州大学 | 国立 | 1.45億円 | 1.28億円 | 362件 | +3.9% | 8位 |
収入の第1位は京都大学の15.15億円で、東京大学(9.44億円)、大阪大学(7.21億円)が続きます。上位3校で大学全体の44.4%、上位10校で68.3%を占め、出願件数よりも上位校への集中が大きくなっています。
出願件数の順位と比べると、違いが目立つ大学があります。北海道大学は出願9位に対して収入は4位でした。札幌医科大学は出願件数では上位20校に入りませんが、収入は2.06億円で7位です。順天堂大学は収入2.77億円のうち特許権の実施等によるものは0.03億円で、大半は成果有体物による収入(2.59億円)でした。
第11位〜第20位(特許出願件数)
| 順位 | 大学 | 設置 | 出願件数 | 国内 | 外国 | 前年度差 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 11 | 東京理科大学 | 私立 | 177件 | 124件 | 53件 | +37件 |
| 12 | 広島大学 | 国立 | 171件 | 121件 | 50件 | +18件 |
| 13 | 神戸大学 | 国立 | 166件 | 111件 | 55件 | -23件 |
| 14 | 信州大学 | 国立 | 154件 | 92件 | 62件 | +39件 |
| 15 | 早稲田大学 | 私立 | 127件 | 96件 | 31件 | +3件 |
| 16 | 千葉大学 | 国立 | 118件 | 82件 | 36件 | 0件 |
| 17 | 筑波大学 | 国立 | 114件 | 109件 | 5件 | -14件 |
| 18 | 東京農工大学 | 国立 | 111件 | 84件 | 27件 | +31件 |
| 19 | 名古屋工業大学 | 国立 | 105件 | 84件 | 21件 | +13件 |
| 20 | 金沢大学 | 国立 | 100件 | 72件 | 28件 | +9件 |
まとめ
特許出願件数は東京大学が917件で第1位、大阪大学、京都大学、東北大学が続きました。私立では慶應義塾大学、公立では大阪公立大学が最上位です。知的財産権等収入は京都大学が15.15億円で第1位となり、出願件数とは順位が入れ替わります。出願件数は研究成果を権利化する活動の量、収入はその成果が実際に使われた結果を示す指標です。共同研究先や技術の導入先を検討する際は、両方をあわせてご覧ください。
出典:文部科学省「令和6年度 大学等における産学連携等実施状況について」機関別データ(様式5・様式6)、同 令和5年度版(2026年9月30日閲覧)