
政府が2026年3月に閣議決定した第6次男女共同参画基本計画は、大学の教員に占める女性の割合について、教授等(学長・副学長・教授)を2025年の20.1%から2030年に23%へ、准教授を28.0%から30%へ引き上げる成果目標を掲げました。国立大学協会も2026年6月、2030年までに国立大学全体の女性教員比率を30%以上とする新たなアクションプラン(2026〜2030年度)を策定しています。本記事では、国立大学協会が2026年2月に公表した第22回追跡調査(2025年5月1日現在)をもとに国立大学85校の女性教員比率を順位化し、上位10大学の取組と10年間の変化を整理しました。
ランキングの評価方法

- 出典:一般社団法人国立大学協会「国立大学における男女共同参画推進の実施に関する第22回追跡調査報告書」(2026年2月20日公表)添付資料C「大学別女性教員比率一覧」。順位は出典どおり(同率は出典の並び順)。
- 対象:国立大学85校(回収率100%)、2025年5月1日現在。
- 定義:女性教員比率=女性教員数÷教員総数。教員は学長・理事・副学長・教授・准教授・講師(常勤)・助教の合計で、助手を除きます。令和7年度学校基本調査の「教員数(本務者)」に基づくため、任期付き教員や附属病院・附置研究所所属の教員を含みます。学長・理事・副学長が教授を兼ねる場合は教授欄から除いて集計されています。
- 女子大学の扱い:お茶の水女子大学(1位)と奈良女子大学(3位)は出典の一覧に含まれるため除外していません。女子大学を除くと1位は東京外国語大学(44.1%)となります。
- 10年前との比較:第12回追跡調査(2015年5月1日現在、86校)の同一覧を用いました。2024年10月に東京医科歯科大学と東京工業大学が統合した東京科学大学は、前身2大学の合算値が出典にないため比較対象外としました。
- 私立大学:出典に含まれないため、各大学公表の専任(基幹)教員の男女別人数を参考として別表に掲載しました。定義や基準日が異なるため順位付けはしていません。
- 全体の水準:国立大学全体は20.7%(2024年20.0%、2015年15.4%)。区分別は総合大学20.6%、理工系大学14.8%、文科系・医科系・教育系大学26.7%、教授に限ると13.2%。文部科学省の令和7年度学校基本調査(確定値)では国公私立812大学の本務教員に占める女性は28.2%です。
女性教員比率が高い国立大学 TOP10(2025年5月1日現在)
| 順位 | 大学 | 女性教員比率 | 女性教員数/教員総数 | 主なpt |
|---|---|---|---|---|
| 1 | お茶の水女子大学 | 46.2% | 92人/199人 | 女子大学。教授78人中33人が女性。10年前と同水準 |
| 2 | 東京外国語大学 | 44.1% | 108人/245人 | 女子大学を除くと最高。10年で+7.8pt |
| 3 | 奈良女子大学 | 40.7% | 81人/199人 | 女子大学。前回比+2.2ptで上昇幅は全体4位 |
| 4 | 東京藝術大学 | 35.7% | 100人/280人 | 10年で+13.5pt、上位20校で最大の伸び |
| 5 | 東京学芸大学 | 33.7% | 94人/279人 | 教育系大学で最高。2023年に30%超 |
| 6 | 大阪教育大学 | 31.3% | 73人/233人 | 3年連続31%台。区分目標31%を達成 |
| 7 | 総合研究大学院大学 | 30.4% | 7人/23人 | 教員23人の大学院大学。変動が大きい |
| 8 | 兵庫教育大学 | 28.1% | 38人/135人 | 前回比−0.8ptも8位を維持 |
| 9 | 筑波技術大学 | 27.6% | 29人/105人 | 理工系区分で唯一の上位10校入り |
| 10 | 愛知教育大学 | 27.0% | 53人/196人 | 10年で+8.8pt、27位から10位へ |
各大学の解説
第1位 お茶の水女子大学(46.2%)

女性教員92人、教員総数199人。教授78人中33人(42.3%)、准教授66人中32人が女性で、学長も女性です。2015年の45.9%(1位)からほぼ横ばいで、10年間40%台を維持しています。学長を本部長とする「グローバル人材育成・ダイバーシティ推進本部」が、学位取得後に専任職を持たない女性研究者を支援する「みがかずば研究員制度」や、女性研究者を顕彰する「お茶の水女子大学賞」(湯浅年子賞など5賞)を運営しています。国立大学協会への報告では、第4期中期目標期間の終了時点で役職者全体の50%以上、経営協議会委員の女性比率52%以上を目標とし、2025年4月1日時点の後者は54.8%と目標を上回っています。
第2位 東京外国語大学(44.1%)

教員総数245人のうち女性は108人。女子大学を除けば国立大学で最も高く、2015年の36.3%から7.8ポイント上昇しました。教授106人中35人、講師41人中24人が女性です。「ダイバーシティ環境推進に関わる基本方針・行動計画」は女性研究者の在籍比率の目標を40%とし、経験豊富な女性研究者が助言するグループメンター制度、出産・育児・介護の相談窓口、研究支援員配置や病児保育支援などのライフイベント支援制度を設けています。2016年度には文部科学省「ダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ(牽引型)」の共同実施機関に採択されました。同協会への報告では、学内保育所と研究支援制度による両立環境づくりを2025年度の取組としています。
第3位 奈良女子大学(40.7%)

女性教員81人、教員総数199人。前回の38.5%から2.2ポイント上昇し、上昇幅は85校中4位でした。2015年比では6.1ポイントの増加です。男女共同参画推進機構の「みかさプログラム」は、大学院生から管理職までライフコースに沿って女性研究者を支援する仕組みで、教育研究支援員制度やワークライフバランス支援相談室を備え、ジェンダーギャップのない「fifty-fifty」な大学環境を掲げています。国立大学協会への報告では、第4期中期目標期間の終了時点で女性教員比率41%、女性教員採用比率50%、上位職の女性比率35%を数値目標とし、2024年度採択の「ダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ(女性リーダー育成型)」と新設の「fifty-fifty実現本部」で教員人事を監視するとしています。
第4位 東京藝術大学(35.7%)

教員280人中、女性は100人。2015年の22.2%(11位)から13.5ポイント上昇し、上位20校で最大の伸びを示しました。准教授90人中43人(47.8%)が女性で、教授でも133人中34人を占めています。ダイバーシティ推進室は「教職員・学生のネットワーク構築」「情報発信」「意識改革・能力開発」「支援・環境改善」の4項目を柱に活動しています。第22回追跡調査の大学報告では、女性教員(研究員相当を含む)の任用割合を高い水準(今年度は概ね50%)に維持し、女性上位職の割合を概ね25%まで増やすことを中期計画の取組とし、2025年度はベビーシッター派遣事業割引券の発行と、ライフイベント期の研究者への教育研究支援員の配置を実施するとしています。
第5位 東京学芸大学(33.7%)

女性教員94人、教員総数279人。教育系大学で最も高く、2015年の24.7%から9.0ポイント上昇して2023年に30%を超えました。男女共同参画推進本部の実績として、学内保育園「学芸の森保育園」の設置、大学入学共通テスト時の保育サービス、産前休暇の6週間から8週間への延長、子の看護休暇の対象を小学6年生までに拡大したことなどを公表しています。国立大学協会への報告では、育児・介護・看護等支援補助員制度の対象拡大と措置率100%の確保を実施済みとし、「女性教員割合30%維持」を中期計画の取組に掲げる一方、補助員の利用時間が希望者1人あたり80時間以下にとどまる点を課題としています。
第6位 大阪教育大学(31.3%)

教員総数233人のうち女性は73人。2023年以降3年連続で31%台を保ち、文科系・医科系・教育系大学の区分目標31%を達成した4校の1つです。大学公表の2026年5月1日現在の教員数では220人中68人(30.9%)が女性で、教授106人中28人、准教授81人中29人を占めています。2011年2月15日制定の男女共同参画推進指針は、人権の尊重、教育・研究・就業と家庭生活の調和支援、次世代育成支援など5つの基本方針を定めています。同協会への報告では、女性教員の増員と女性管理職の登用(令和10年3月までに20%以上)を継続する一方、一部の専門分野で公募への女性応募者が少なく採用が難しい点を課題に挙げています。
第7位 総合研究大学院大学(30.4%)

女性教員7人、教員総数23人。教員数が少ないため比率の変動が大きく、2019・2020年の42.3%から2023年に28.0%まで下がり、2024年以降は30.4%です。2019年2月5日の学長裁定による男女共同参画推進基本計画は、教職員の意識向上、就労と家庭生活の両立支援、女性教職員の積極的な採用・育成、取組の評価と統計の情報提供の4つを基本方針としています。2026年4月から2031年3月までの一般事業主行動計画では「女性教員の割合を30%以上とする」ことを目標1に掲げ、公募要項に人材の多様性に配慮する旨を明記して女性応募者の確保を図るとしています。
第8位 兵庫教育大学(28.1%)

教員135人中、女性は38人。前回の28.9%から0.8ポイント下がったが順位は8位を維持し、2015年の24.7%からは3.4ポイント上昇しています。2009年11月25日学長裁定の男女共同参画基本方針は両立支援や制度・慣行の見直しなど6項目を掲げ、学内に子育て支援ルーム「かとうGENKi」を設けています。大学の公表(2026年4月1日現在)では大学教員の管理職18人中6人(33.3%)が女性、令和8年度採用者の女性割合は29.0%でした。2026年4月からの行動計画では、期間中に女性教職員15人以上を1つ上位の職階へ昇任させること、男性教職員の育児休業等の取得率50%以上を目標としています。
第9位 筑波技術大学(27.6%)

女性教員29人、教員総数105人。理工系大学の区分で唯一の上位10校入りで、区分目標14%の約2倍の水準にあります。前回の13位から順位を4つ上げ、2015年の21.2%からは6.4ポイント上昇しました。聴覚障害・視覚障害のある学生を受け入れる産業技術学部・保健科学部に加え、2025年度に共生社会創成学部を設置しています。国立大学協会への報告では、大学の意思決定過程に参画する女性職員の割合20%以上の目標に対し現状25.4%とし、両立支援制度を活用しやすい雰囲気の醸成と柔軟な働き方の環境整備を挙げています。女性活躍推進法に基づく公表(2026年5月現在)では管理職に占める女性は20.0%、係長級は72.2%です。
第10位 愛知教育大学(27.0%)

教員総数196人のうち女性は53人。2015年の18.2%(27位)から8.8ポイント上昇して順位を17上げ、2022年以降は27%前後で推移しています。大学の公表(2026年5月1日時点)では、役員に占める女性の割合は12.5%、管理職では27.6%で、子育て支援に関する認定「プラチナくるみん」を取得しています。追跡調査の報告では、教育研究支援者配置制度などの取組を継続して研究者全体に占める女性の割合20%以上を維持するとし、2025年度は同制度とベビーシッター派遣事業の学内周知、相談体制の確立に取り組むとしています。
11位〜20位
| 順位 | 大学 | 女性教員比率 | 女性教員数/教員総数 | 主なpt |
|---|---|---|---|---|
| 11 | 鳴門教育大学 | 26.7% | 35人/131人 | 前回比+1.3pt |
| 12 | 一橋大学 | 26.6% | 113人/425人 | 前回21位から上昇。女性教員14人増 |
| 13 | 長崎大学 | 26.5% | 292人/1,101人 | 附属病院を有する総合大学で最高 |
| 14 | 奈良教育大学 | 26.3% | 25人/95人 | 10年で+8.0pt |
| 15 | 浜松医科大学 | 26.1% | 108人/414人 | 医科系大学で最高 |
| 16 | 京都教育大学 | 25.9% | 28人/108人 | 2017年以降25〜26%台で安定 |
| 17 | 旭川医科大学 | 25.8% | 89人/345人 | 10年で+9.4pt、45位から17位へ |
| 18 | 千葉大学 | 25.4% | 334人/1,315人 | 女性教員334人は上位20校で最多 |
| 19 | 和歌山大学 | 24.9% | 56人/225人 | 総合大学の区分目標24%を達成 |
| 20 | 滋賀医科大学 | 24.6% | 95人/386人 | 前回14位から20位(−1.3pt) |
参考:私立大学の公表値(順位付けなし)
| 大学 | 基準日 | 女性教員比率 | 女性/総数 | 教員の範囲(各大学の定義) |
|---|---|---|---|---|
| 日本女子大学 | 2026年5月1日 | 51.0% | 98人/192人 | 基幹教員(学長を除く) |
| 東京女子大学 | 2026年5月1日 | 44.4% | 52人/117人 | 本務教員(学長を除く) |
| 国際基督教大学 | 2026年5月1日 | 39.3% | 59人/150人 | 専任教員(学長・副学長を含む) |
| 上智大学 | 2025年5月1日 | 約38% | 非公表/549人 | 専任教員・特任教員等(助手含む、整数%公表) |
| 慶應義塾大学 | 2026年5月1日 | 22.0% | 287人/1,304人 | 専任教員(教授〜助教。有期教員・教諭を除く) |
| 早稲田大学 | — | 取得できず | — | 統計資料を取得できず(長期目標は女性教員30%) |
| 津田塾大学 | 2026年5月1日 | 非公表 | —/95人 | 男女別の公表なし |
まとめ
国立大学全体の女性教員比率は2025年5月1日時点で20.7%と、10年前の15.4%から5.3ポイント上昇し、20%以上の大学は52校に達しました。一方で教授に限れば13.2%にとどまり、上位10校のうち8校は女子大学、教育系、文科系の大学が占めています。2030年に向けた目標(国立大学協会の全体30%、第6次基本計画の教授等23%)との差はなお大きいままです。理工系大学や附属病院を持つ大規模総合大学でどこまで比率を引き上げられるかが、次の5年間の焦点になります。