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【2025年度最新版】国内の国立大学における寄附金ランキング

国立大学寄附金 ランキング

日本の大学にとって、企業や個人からの寄附金は教育研究活動を支える重要な財源です。少子化などで収入構造が厳しさを増す中、寄附金は大学が安定的に運営資金を確保し、大学改革や研究支援を進めるための原動力となります。

そこで、本記事では公的に公表されている最新年度(直近年度)のデータに基づき、国立大学の寄附金受入額ランキングを作成しました。大学ごとの寄附金額と特徴を知ることで、各大学の財務戦略や社会との連携状況が見えてきます。

目次

評価方法

本ランキングでは各大学の2022年度財務諸表と文科省資料を用い、企業寄附と個人寄附の合計を算出しました。寄附金は企業・卒業生・一般からの金銭寄付額で、現物は含みません。

大型寄附による年度偏重を考慮しつつ、寄附金総額を億円単位に丸めて国立大学を多い順に並べ、上位10校を抽出しています。医学部病院収入などは除外しており、寄附金比率が高い大学ほど寄附依存度も大きい傾向にあります。

国立大学寄附金ランキング

以下が国立大学別の寄附金受入額トップ10(2022年度)です。

順位大学名年度寄附金額(億円)
1位東京大学約100億円程度(推定)
2位京都大学約95億円程度(推定)
3位大阪大学91億円
4位東京工業大学(現・東京科学大学)89億円
5位東北大学約60億円程度
6位名古屋大学約50億円程度
7位九州大学約48億円程度
8位北海道大学約40億円程度
9位筑波大学約30億円程度
10位岡山大学約20億円程度

※1位と2位の東京大学・京都大学は金額が公表資料から推定となりますが、2022年度において他大学を抑えて最多・次点の寄附金額でした。東京大学基金への寄付金実績は2023年度で54億円に達しており、企業からの寄附等を含めた総額では約100億円規模と見込まれます。京都大学も2022年度に大学基金だけで67億円の寄付を集めており、総額では東京大学に次ぐ水準です。

上位に入った各国立大学について、寄附金の背景や活用状況、寄附集めの特徴を1校ずつ見ていきましょう。

1. 東京大学(The University of Tokyo)

1. 東京大学(The University of Tokyo)

東京大学は日本を代表するトップ大学として、多方面から厚い支援を受けています。寄附金額は毎年国立大学中で最も多く、2022年度も全国第1位でした。東京大学では大学全体の教育研究を支援する「東京大学基金(UTokyo Fund)」を設置し、卒業生や企業から幅広く寄付を募っています。

近年は創立150周年に向けた「UTokyo NEXT150」キャンペーンを展開し、2023年度には東京大学基金への寄付だけで総額54億円に達しました。企業からの大型寄附や研究支援講座への寄付も多く、寄附金収入は学生納付金(授業料収入)を上回る重要な財源となっています。

寄附金は奨学金や最先端研究への助成、施設整備など多岐に活用されており、「世界の公共性に奉仕する大学」という理念の下、社会課題解決に資する研究・教育を後押ししています。

2. 京都大学(Kyoto University)

2. 京都大学(Kyoto University)

京都大学は東京大学と並ぶ研究大学として寄附金も全国トップクラスです。2021年度には寄附金収入が約409億円に達し、当時国立大学で断トツの記録を打ち立てました。これは創立125周年記念事業の一環で「未来基金」などへの大規模寄付が相次いだことが要因で、パナソニックなど企業からの寄付講座や卒業生の大型寄附が含まれます。

その反動もあり2022年度はやや落ち着いたものの、それでも東京大学に次ぐ寄附金額を維持しています。京都大学は大学基金を通じた寄付集めに積極的で、2022年度は基金への寄付だけで67億円を集めました。

寄附金は学生支援(奨学金や学生プロジェクト助成)、最先端研究の推進(iPS細胞研究など京都大学発の世界的研究への支援)、教育環境の充実などに活用されています。伝統的に「自由の学風」で知られる京大ですが、その理念に共感した卒業生・財界人からの巨額寄附も多く、寄附文化が根付いていると言えるでしょう。

3. 大阪大学(Osaka University)

3. 大阪大学(Osaka University)

大阪大学は関西地区の旧帝大として、企業・同窓からの寄附金が豊富な大学です。2022年度の寄附金収入は約91億円に上り、東京大学・京都大学に次ぐ全国3位の規模でした。大阪大学の寄附金額は、医学部附属病院を含む大規模総合大学としての強みと、産業界との連携の深さを反映しています。

関西財界との繋がりが強く、製薬・化学メーカーなどからの研究寄附や、大阪大学のOB・OGによる奨学寄附金が多いことが特徴です。また、大阪大学は複数の基金(教育支援基金、研究支援基金など)を設けて寄付を募っており、2021年度には寄附金収入が3年間で約333億円に達したとのデータもあります。

寄附金は学生向けの奨学金や留学支援、基礎研究のシーズ育成、産学連携プロジェクトなど幅広く活用され、国際的な研究大学としての地位向上に役立てられています。

4. 東京科学大学(Institute of Science Tokyo)

4. 東京科学大学(Institute of Science Tokyo)

東京工業大学は理工系のトップ大学でありながら、寄附金収入が非常に大きい点で注目されます。2022年度の寄附金は約89億円に達し、国立大学中4位の規模でした。これは同大学の経常収益(病院収益を除く)に占める寄附金比率が15.3%と極めて高かったことを意味し、大学運営への寄附金の貢献度が群を抜いています。

寄附金額が増加した背景には、東京工業大学が2024年に東京医科歯科大学と統合し「東京科学大学」となる計画の中で、「東京科学大学基金」を新設して幅広い寄付を募ったことがあります。この基金は世界トップクラスの科学系大学を目指すための財政基盤強化が目的であり、多くの企業や卒業生から賛同を得て資金が集まりました。

また、東京工業大学は従来から理工系の産学協同プロジェクトに対する民間企業からの寄付講座が多く、半導体・材料・AI分野など最先端研究への助成が積極的に行われています。寄附金は学生の研究奨励金や新キャンパス整備などにも充当され、技術立国日本を牽引する人材育成に役立てられています。

5. 東北大学(Tohoku University)

5. 東北大学(Tohoku University)

東北大学は東北地方のみならず全国有数の研究大学として、寄附金額も上位に位置します。2021年度の寄附金受入額は約63.5億円で、国立大学中第4位の実績を残しました(※2022年度も概ね同水準と推定)。東北大学では東北大学基金を通じた卒業生や地域からの寄付に加え、震災復興支援を契機とした企業からの寄附講座も数多く設置されています。

特に材料科学やスピントロニクスなど同大の強みを生かした分野で企業連携が盛んで、それに伴う研究寄附も増加傾向です。また東北大学は2023年、政府の「国際卓越研究大学」の第1号に指定され、今後は国からの大型支援が見込まれます。この指定により大学としてのプレゼンスが向上し、更なる寄附金獲得にも追い風となる可能性があります。

集まった寄附金は学生向け奨学金、研究設備の充実、ベンチャー支援(大学発スタートアップ育成)などに活用され、東北発の革新的研究と人材育成を支えています。

6. 名古屋大学(Nagoya University)

6. 名古屋大学(Nagoya University)

名古屋大学は中部地方の中核大学で、自動車産業をはじめとする地域企業との結びつきが強いのが特徴です。2022年度の寄附金収入はおよそ50億円規模と推定され、全国トップクラスに入ります。名古屋大学は2020年度に岐阜大学と法人統合して東海国立大学機構を構成しており、統合後の寄附金データは機構全体で公表されています。

近年、名古屋大学はトヨタ自動車など自動車関連企業からの研究寄附や、量子科学・農学分野での企業寄附講座が顕著に伸びています。また医学部附属病院関連の寄付も含め、多彩な分野から資金を集めています。

2019~2021年度の3年間累計では名古屋大学(岐阜大学分を含まず)だけで約187億円の寄附金を集めており、単年度でも50~70億円台を推移しています。寄附金は学生の経済支援(名大基金による奨学金)や最先端研究拠点の整備に活用されており、中部発のイノベーション創出に寄与しています。

7. 九州大学(Kyushu University)

7. 九州大学(Kyushu University)

九州大学は九州地方最大の総合大学で、寄附金額も上位に食い込んでいます。2021年度の寄附金受入額は約47.7億円で、国立大学の中で6番目に多い水準でした(2022年度も概ね50億円弱と推定)。九州大学では九州大学基金が中心となり、多方面から寄付を募っています。

地元福岡をはじめ九州の産業界(エネルギー、食品、製薬など)から研究支援の寄付があり、また同窓会組織「濱紫会」を通じた卒業生からの寄付も積極的です。キャンパス移転整備など大規模プロジェクトの際には記念募金キャンペーンを展開し、多くの寄付を集めました。

寄附金の使途としては、留学生支援や大学院生の研究奨励、起業支援プログラム(QBIP)など九大ならではの取り組みもあります。九州大学は国際化にも力を入れており、海外同窓ネットワークからの寄付も徐々に増えています。こうした幅広い寄付の積み重ねが、九州大学の教育研究レベル向上と地域貢献に繋がっています。

8. 北海道大学(Hokkaido University)

8. 北海道大学(Hokkaido University)

北海道大学は北日本を代表する総合大学で、寄附金額では全国8位前後につけています。2021年度実績では約40.8億円の寄附金を集めており、その後も安定した寄附が続いているとみられます。北海道大学は2026年に創基150周年を迎える予定で、それに向け「北大フロンティア基金」を中心とした寄附キャンペーンを展開中です。

農学や水産学など北海道大ならではの分野でOB・OGや関連企業からの寄附が得られているほか、獣医学や宇宙科学といった特色ある研究への支援も集まっています。

また、北海道という土地柄、地元自治体と連携したふるさと納税による大学支援制度も活用され、一般市民からの寄附も増加傾向にあります。集まった寄附金は学生の海外研修支援、新研究棟の建設、大学牧場の施設整備など多岐に活かされ、北海道大学の教育研究環境の充実に貢献しています。

9. 筑波大学(University of Tsukuba)

9. 筑波大学(University of Tsukuba)

筑波大学は首都圏の研究学園都市に位置し、新興の総合大学ながら寄附金集めにも積極的です。2017年度時点で既に約26.4億円の寄附金を集めており、その後も産学連携プロジェクトの進展に伴って寄附金額を伸ばしています。筑波大学は理工医農スポーツと幅広い分野を擁し、それぞれで特色ある基金を設けています。

例えば、体育系のオリンピック・パラリンピック支援基金や、医学系の最先端がん研究基金などです。また、筑波大学発ベンチャーの活性化に対する企業からの寄附も見られ、つくば市との地域連携によるクラウドファンディング型の寄附募集など新たな試みにも挑戦しています。

こうした多彩な寄附金は、学生寮の整備や図書館拡充、研究助成(若手研究者へのシード資金)などに充てられ、若い大学ならではのフレキシブルな教育研究支援に役立っています。

10. 岡山大学(Okayama University)

10. 岡山大学(Okayama University)

岡山大学は中国・四国地方を代表する国立大学として、堅実に寄附金を集めています。2017年度の寄附金受入額は約20.16億円で、その後徐々に増加傾向にあります。地方大学ではありますが、医学部を有する強みから附属病院への寄附(医療研究支援や患者支援目的)や製薬企業からの研究寄附が多いことが特徴です。

また「学都岡山大学基金」を設立し、地元企業や卒業生から教育研究支援の寄付を募っています。近年では SDGs達成に資する研究(例えば豪雨災害対策や温暖化対応技術)への寄附も呼びかけており、地域密着型のクラウドファンディングによる小口寄附プロジェクトも展開しています。

集まった寄附金は学生への奨学金や留学支援、地方創生に関わる研究助成などに活用されており、岡山大学の掲げる「地域と世界に貢献する大学」の実現を下支えしています。

まとめ

国立大学の財政状況を見ると、政府からの運営費交付金が年々削減されており、大学が自助努力で外部資金を獲得する必要性が高まっています。その中で寄附金は、使途を大学側の裁量で決められる柔軟な資金として重要度を増しています。今回のランキング上位校はいずれも積極的なファンドレイジング戦略を展開し、大口寄附の獲得や基金の拡充に努めてきました。

寄附金ランキングからは、各大学の特徴や強みが浮かび上がります。大学ごとに異なる寄附者層(地元企業、全国規模のOB、一般市民等)との繋がりを大切にしながら、今後ますます大学と社会の連携を深めていくことが求められています。

上位校以外の大学においても、特色ある研究や地域貢献活動をアピールして寄附を呼び込む努力次第で順位を上げる余地は十分にあるでしょう。

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